産業廃棄物の鉱さい(スラグ)とは?種類、処理方法、リサイクルの現状を解説
鉱さい(スラグ)とは、鉱物を精錬する際に生じる副産物で、産業廃棄物としての適切な処理が求められる重要な素材です。
その具体的な処理方法やリサイクルの可能性について、よくわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、鉱さいの定義や発生条件、種類から、具体的な処分方法やリサイクル、環境に及ぼす影響まで詳しく解説します。
鉱さいの処理やリサイクルに関する具体的な知識を得て、適切な産業廃棄物処分にお役立てください。
産業廃棄物の鉱さい(スラグ)とは

鉱さい(鉱滓)とは、鉄やニッケル、クロムなどの金属を製造する際に排出される副産物的な廃棄物です。
金属として利用する成分を取り出した後に残る不純物が、高温溶融状態から冷却・固化したもので、炉かす(スラグ)とも呼ばれます。
金属精錬の現場だけではなく、ごみ焼却施設での高温溶融過程から排出される溶融スラグや、鋳物製品の鋳型に使用した鋳物砂なども鉱さいに含まれます。
環境省の「産業廃棄物の排出及び処理状況等」によると、鉱さいの年間排出量の割合は、産業廃棄物全体のおよそ2.7%。金属関連の製造や廃棄物処理プロセスで広く発生しています。
参考:環境省「令和5年度事業産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値」
鉱さいが発生する条件
鉱さいが発生する主な条件は、金属を高温で溶融することです。
製鉄の場合、鉄鉱石などの原料を溶かし、比重の違いによって金属成分と不純物を分離させます。分離された不純物は最終的に冷却されて固まり、石のような形状の鉱さいとして排出されるのです。
高温溶融の工程が行われるのは製鉄だけではありません。他の産業の金属精錬でも共通して行われるため、さまざまな種類の鉱さいが産業廃棄物として発生しています。
代表的な鉱さいの分類と種類
鉱さいは、大きく鉄鋼スラグと非鉄金属スラグに分けられます。
▼鉄鋼スラグ
- 高炉スラグ:銑鉄(溶銑)を製造する際に発生
- 製鋼スラグ:銑鉄から不純物を取り除き、鋼を製造する際に発生
▼非鉄金属スラグ
- フェロニッケルスラグ:ニッケル系金属の製造時に発生
- 銅スラグ:銅精錬の過程で発生
これらのスラグは性質や成分に違いがあるため、処理・リサイクルの方法も異なる場合があります。
鉱さいの処理方法

金属製造工程や焼却施設などから排出される鉱さいは、産業廃棄物として法律に基づく適切な処理が求められます。不適切に処理すると環境に大きな影響を及ぼす可能性があるため、種類や含まれる成分を正確に把握した上で処分方法を選択しなければなりません。
ここで鉱さいの処理方法について解説します。
最終処分(埋め立て)
鉱さいのうち、有害物質が含まれていないものは管理型最終処分場へ、有害物質を含むものは遮断型最終処分場へ搬入し、埋め立て処分するのが一般的です。
不適切な処分を行うと、土壌汚染や水質汚染などのリスクが高まるため、事前の成分分析や有害物質の封じ込め対策を十分に行う必要があります。特に六価クロムや重金属などが検出された場合は、より厳重な管理下で処理することが求められます。
リサイクル
近年では、鉱さいに含まれる有害物質の発生を抑えつつ、金属資源に代わる素材として再利用するケースが増えています。実際に鉱さいの再生利用率は90.5%と高い水準です。がれき類や金属くずなどと並び、リサイクルが比較的進んでいる産業廃棄物となっています。
参考:環境省「令和5年度事業産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値」
ここで鉱さいをリサイクルする方法を見ていきましょう。
路盤材
道路を敷設する際に、アスファルトやコンクリートの下に敷き詰める路盤材として鉱さいを活用する方法があります。鉱さいは石や砂利と似た物理的性質を持つため、強度や粒度を調整すれば路盤材としての利用が可能です。
ただし、鉱さいの成分によっては有害物質が溶出するリスクがゼロではありません。土壌環境基準を満たすかどうかを慎重に評価し、安全を確認した上で使用することが大切です。
セメント原料
電気炉スラグなど、一部の鉱さいはセメント原料として再利用されるケースが増えています。鉱さいは粘土や珪石の代替となる成分を含んでおり、セメントの原料に混ぜることで有害物質溶出のリスクを抑えつつ資源を有効活用できます。
セメントは高温処理工程があるため、スラグ中の有害物質が固化され、環境への影響を大幅に減らせる点がメリットです。
肥料
製鉄工程で発生する高炉スラグには、CaO・SiO₂・MgOなど肥料成分となる物質が含まれており、鉱さいけい酸質肥料として稲作などに活用されています。
製鋼スラグにはFeOやP₂O₅なども含まれているため、畑作や牧草地など多様な農業シーンで利用できるのが特徴です。
こうした成分は土壌の酸性化を中和したり、植物の光合成を助けたりする効果が期待できるため、農業生産性の向上にも寄与しています。
磯焼け対策への応用
磯焼けとは、海藻類が大幅に減少し、海岸の生態系や漁業に深刻な影響を与える現象です。その原因の一つに、海中の鉄分不足が挙げられます。河川上流の森林伐採などにより海に流れ込む鉄分が減少し、海藻の生育が阻害されてしまうのです。
そこで、鉄分を多く含む鉱さいを海中に投入し、海藻の生育に必要な鉄分を補給する取り組みが各地で進められています。こうしたリサイクル手法は、海洋環境の改善や水産資源の保護にもつながると期待されています。
鉱さいが抱える3つの問題点

産業廃棄物の中でもリサイクル率が高く、再利用の幅が広いとされる鉱さいですが、特有の課題も存在します。適切な管理や技術の導入が行われないと、環境や健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、以下の点に注意が必要です。
リサイクルへの課題
鉱さいは高い再利用率を誇る一方で、全量が有効利用されているわけではありません。
路盤材や骨材として使う場合はJIS規格を満たす品質や安全性が求められます。長期的な強度や安定性に疑問を呈する声もゼロではありません。
また、適切な粒度調整や不純物の除去などの加工工程が必要であり、再利用を進める上での技術力やノウハウが十分に行き渡っていない地域や業者も存在します。
リサイクルにおける環境汚染の懸念
鉱さいには重金属などが含まれている場合があります。そのためリサイクルしても、雨や風、紫外線、温度変化などの影響を受けて長期的に有害物質が流出するリスクが指摘されています。
最初の検査で問題がなかったとしても、長期間の環境変化を経てから汚染が発生する可能性は否定できません。
もし再利用した鉱さいから有害物質が溶出した場合、土壌や地下水の汚染を引き起こし、農作物や人体にも被害が及ぶ恐れがあります。リサイクルにおいても慎重な対策と監視が欠かせません。
鉱さいに関連する事故事例
2014年、群馬県渋川市で再利用された鉱さいから、環境基準を超える六価クロムやフッ素が検出された事例があります。六価クロムは発がん性が指摘されており、水質や土壌への影響が問題視されました。
その後の立ち入り調査で、鉱さいが適切に処理されていなかったことが判明し、関連企業の責任が問われることとなりました。このように、不適切な処理や管理不足は深刻な環境汚染と社会問題につながる恐れがあります。
鉱さいに関連するよくある質問

鉱さいの処分やリサイクルについては、よく寄せられる質問とポイントを解説します。
鉱滓の処分費はいくらですか?
鉱さいの処分費用は、約10円~80円/kg程度が目安とされるケースが多いようです。ただし、鉱さいの性質や量、また処分する地域や業者の設備によって変動するため、実際には幅があります。
正確な費用を知りたい場合は、産業廃棄物処理業者に依頼して見積もりを取るようにしてください。
鉄鋼スラグは毒性がありますか?
鉄鋼スラグは高温処理によって有害物質が減少することが多いものの、マンガンやクロムなど毒性をもつ元素が含まれる場合があります。こうした成分が環境や健康に影響を与えるリスクがあるため、使用や処分の際は適切な成分分析や管理が必須です。
まとめ
鉱さい(スラグ)は、産業廃棄物として適切な処理が義務づけられる一方で、さまざまなリサイクル方法が存在する重要な副産物です。
再利用率が高いとはいえ、有害物質の溶出リスクや長期的な品質への懸念もあるため、十分な分析と安全管理のもとでのリサイクル推進が求められています。
処理や活用の判断には専門知識が必要です。適切な方法で安全に処理を行うためには、認可を受けた産業廃棄物処理業者や専門業者に相談しましょう。
