産業廃棄物の廃油とは。定義から処理方法・費用までわかりやすく解説
産業廃棄物としての廃油には明確な定義があり、その種類や取り扱い方法によって適切な処理が求められるのをご存じでしょうか。
廃油とは具体的に何を指すのか、どのように扱うべきなのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
そこで本記事では産業廃棄物の廃油の定義や処理方法をわかりやすく解説します。
産業廃棄物管理の基礎を学びたい方、廃油の取り扱いに不安を感じている方はぜひ参考にしてください。
産業廃棄物における「廃油」の定義
産業廃棄物における「廃油」とは、すべての産業から排出される使用済みの油のことです。これにはさまざまな種類があり、用途や性質によって分類されます。
廃油の主な例は以下の通りです。
1.鉱物性油
- 石油を原料としている油
- 用途は幅広い
例:エンジンオイル、潤滑油、重油など
2.動植物性油
- 動物や植物から抽出された油
例:ラード、サラダ油、てんぷら油など
3.廃溶剤
- 主に石油や油脂工業の生産工程において排出される溶剤
- 塗装、洗浄、印刷などの作業にも幅広く使用されている
例:洗浄油、アルコール類、石油、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)、ガソリン
特別管理産業廃棄物の「廃油」とは
廃油の一部は特別管理産業廃棄物に分類されます。特別管理産業廃棄物とは、爆発性や毒性、感染性があり、取り扱いに厳重な注意が必要な産業廃棄物のことです。
これらは危険性が高いため、保管や運搬の方法などは普通産業廃棄物よりも厳格なルールが定められています。普通産業廃棄物と同じように扱わないよう注意しましょう。
特別産業廃棄物に分類される廃油には引火性廃油と呼ばれるものがあり、引火点が70度未満の揮発油類や軽油類、灯油類が該当します。これらは非常に燃えやすく危険性が高いです。
また、特定の有機塩素化合物やPCB(ポリ塩化ビフェニル)を含有する廃油も特定管理産業廃棄物です。特定管理産業廃棄物の中でも、さらに「特定有害産業廃棄物」として分類されています。
廃油の処理方法
廃油の処理方法は主に①燃料油化、②蒸留再生、③サーマルリサイクルの3パターンです。廃油には種類によって特徴が異なるため、それぞれの処理に向いているものと向いていないものがあります。いずれにしても、廃油の排出事業者は産業廃棄物処理業者に処分を委託しなければなりません。
ここで、それぞれの廃油の処理方法について解説します。
①燃料として再利用する(燃料油化)
廃油から不純物を取り除き、再生油として燃料に再利用する処理方法を燃料油化といいます。一般的な処理工程は次の通りです。
- 廃油の油分と水分を分離する
- 残った油分を遠心分離機にかけて不純物を除去する
こうして生まれた再生油は、ビニールハウスの暖房用燃料や公衆浴場の燃料などに活用されます。
近年注目を集めているのが、菜種油などの廃食用油をバイオディーゼル燃料として再生する方法です。植物油から作られるバイオディーゼル燃料は、廃棄物をリサイクルできる上、燃焼時の二酸化炭素排出量が少ないというメリットもあります。
②有機溶剤の蒸留再生
廃油処理の中でも使用済みの有機溶剤を処理する際は、蒸留再生が行われることがあります。蒸留再生とは不純物を取り除き、新品に近い品質の再生製品を作り出す処理のことです。一般的な処理工程は次の通りです。
- 廃溶剤を装置内の蒸留タンクに入れ、加熱する
- 溶剤を気化させて、不純物と分離させる
- 気化した溶剤を冷却し、再度液体に戻す
③サーマルリサイクル
サーマルリサイクルとは、廃棄物を燃焼させた際に発生する熱エネルギーを回収し、有効利用する処理方法です。廃油もサーマルリサイクルの対象となることがあります。燃焼により発生した熱エネルギーは、発電や暖房、温水施設の熱源などさまざまな用途に利用されます。
廃油の処理費用の目安
廃油の処理にかかる費用は、廃油の種類や量、委託する業者、処分場所など、さまざまな要因によって変動します。そのため正確な費用を把握するには、実際に複数の処理業者から見積もりを取って確認してください。
廃塗料やグリスなどの廃油や、灯油やガソリンといった引火性の高い特別管理産業廃棄物は、一般的な廃油よりも高額な処理費用がかかります。
廃油の種類別の処理費用の目安は下記の通りです。
- 一般的な廃油:5~100円/kg
- 特別管理産業廃棄物
……引火性廃油:20円~/kg
……特定有害産業廃棄物:50円~/kg
産業廃棄物の廃油に関連するよくある質問
ここで、廃油の処理に関して事業者の皆様からよくある質問にお答えします。
飲食店の油は産業廃棄物ですか?
事業活動に伴って生じた使用済みの油はすべて産業廃棄物として扱われるため、飲食店で使用した油も産業廃棄物に該当します。飲食店から出る使用済みの油(廃食油)は、産業廃棄物処理業者に委託して処分するのが一般的です。特に油の使用頻度が高い飲食店では、廃油処理業者に定期的な回収を依頼しているケースが多いです。
重油は産業廃棄物?特別管理産業廃棄物?
事業活動で排出された重油は産業廃棄物に分類されます。ただし一般的に重油の引火点は70℃以上であるため、特別管理産業廃棄物には該当しません。
重油は霧状にした場合、常温でも引火の危険性があります。ただし一般的な廃棄の状況で霧状にすることは考えにくいため、引火の危険性は高くないと考えられるのが普通です。
廃油は有価物ですか?
廃油の中には、リサイクル率が高く有価物として扱えるものもあります。
ただし、有価物として取引する廃油の代金よりも、運搬費が上回る場合は注意しなければなりません。このとき、廃油は排出事業場から買取先までの運搬中は「廃棄物」として扱われ、買取先に到着し引き渡されて初めて「有価物」となります。
これを逆有償取引といいます。逆有償取引の場合、輸送中の廃油は廃棄物として見なされるため、法律による規制の対象となります。
法律違反を避けるには、廃油の買取金額や運搬費用を定期的に確認し、逆有償取引に該当しないかどうかを把握するようにしましょう。
まとめ
事業活動で生じた使用済みの油はすべて産業廃棄物に該当します。廃油の種類によっては普通産業廃棄物ではなく、特別管理産業廃棄物に分類されるものもあるため注意しましょう。廃油の処分方法も、種類によってさまざまです。
いずれにしても廃油は適正処理ができる許可を持つ業者しか処理できません。廃油の排出事業者の方は、法律やルールを正しく理解し、許可を受けた業者に委託して適切に処理することが大切です。